われわれ認定司法書士が「DV加害者やストーカーの片棒を担がされてしまう」という事態はもっとも警戒すべきリスクの一つです。
加害者である相談者に騙されて、被害者の住民票を職務上請求してしまわないように気をつけなければなりません。
相談段階で十分な注意を払っても気づけないことがあるのを前提に考えなければなりません
相談段階で気づけばよいのですが、相談者も本気で騙しにきているはずなので、専門職として十分な注意を払っても気づけないことはあります。
もちろん「債権額が極端に少額(数千円程度)なのに、執拗に住所特定を急いでいる。」とかなら怪しいと思えます。
しかし、例えば金銭消費貸借をしていたなら、相手方の以前の住所や勤務先など詳細な個人情報を持っているのは当然です。
婚姻関係があったなら、実印と印鑑証明書も用意できるでしょう。
金銭消費貸借契約書が偽造された書類で、ストーカー行為で以前の住所を知った場合は、こちらが気づくのは難しいです。
「職務上請求で知った相手方の住所は基本的に依頼者にも明かさない」という基本方針
職務上請求しなければ、訴えを提起することはできないので、通常は職務上請求をします。
ということで「職務上請求で知った相手方の住所は基本的に依頼者にも明かさない」という基本方針となります。
相談者がDV加害者やストーカーの可能性がないと思う場合でも、です。
・取得した住民票を依頼者に直接手渡したり、郵送したりするのは避けます。
(住民票は事務所で保管し、司法書士が作成する法的書面(通知書や訴状)の発送にのみ使用する運用を徹底します。)
・訴状の確認の際にもマスキングします。
・依頼者が「住所を知りたい」と言ってきた場合、「こちらで通知書を作成し、職務上請求で判明した住所に内容証明郵便や訴状を発送します。住所自体はお教えできません。」と回答します。
このような運用になります。
訴訟記録を当事者が見るまでの時間稼ぎに
もっとも、訴訟を提起した場合、訴訟記録は当事者が見れるわけですから、マスキングしたところで限界があります。被害者の方で住民票附票の写し等の交付制限をしてもらうのを期待するくらいしかできません。
我々が出した内容証明郵便を見て他の専門職に相談をしてくれれば、支援措置をするための時間稼ぎにはなるでしょう。
住民票附票の写し等の交付制限(支援措置)の確認 / 市町村窓口との連携
ストーカー行為等の被害者の方は、申出により住民票の写し等の交付や閲覧を制限できます。
被害者が「住民票附票の写し等の交付制限(支援措置)」を講じている場合、職務上請求であっても通常は交付されません。
自治体によっては、支援措置対象者の請求があった際、弁護士や司法書士に対して「正当な理由」を再確認したり、交付を拒否したりすることがあります。窓口の反応が通常と異なる場合は再調査します。
【支援措置の内容】
第三者からの、支援措置対象者の住民票の写し、戸籍の附票の写し等の交付請求については、請求者や請求理由の厳格な審査を行います。厳格な審査の結果、不当な目的によるものでないこととされた請求まで拒否するものではありません。
https://www.city.nerima.tokyo.jp/kurashi/koseki/utsushi/dv_stalker.html
