ローンを利用して車を購入した場合、車検証の「所有者」欄がディーラーや信販会社になり、「使用者」欄が契約者本人になることがあります。
所有権留保権留保がついている車(所有権留保付車両)について解説します。
所有権留保の仕組み
ローン会社名義の車は、所有権留保という民法の制度を利用しています。ローンを完済するまで、ローン会社が担保として車の所有権を保持する契約(所有権留保特約条項)となっています。
車検証上、所有者がローン会社となっていれば、ローン会社の求めに応じなければなりません。
契約者はあくまで「利用者」として車を使う立場です。ローンを完済して所有権解除の手続きを行うまでは、勝手に売却や譲渡をすることはできません。
オリコのオートローンで車両を購入した場合、車両の所有者名義が「オリエントコーポレーション」で登録されることがあります
銀行のマイカーローンの場合は、購入者の名義になっていることが多いです。
自動車の所有者(名義人)は購入者になります。
例えば、横浜銀行のマイカーローンを利用した場合、原則として車検証上の所有者名義は「購入者本人」になります。
マイカーローン利用中は自分の自動車の所有権は自分が持つため、途中で自動車を売却することもできます。一方で、ディーラーローンは、ローン完済まで自動車の所有権はディーラー側にあるので、自由に売却することができません。
参考:横浜銀行
【特集】3分でわかる金融機関のマイカーローンのメリットとデメリット|マイカーローン(自動車ローン)|横浜銀行3分でわかる金融機関のマイカーローンのメリットとデメリット
ローン完済後の「所有権解除手続き」について
多くのローン契約には、所有権留保という特約があり、ローンを完済するまでは法的な所有者はローン会社です。
ローンを完済した後にローン会社やカーディーラーに連絡すれば、所有権解除手続きが可能となります。(ローン会社から手続き書類が送られてきます)
第三者による差し押さえの可否
原則として、消費者金融などの他の債権者がこの車を差し押さえることはできません。車は債務者本人の財産ではなく、第三者(ローン会社)の財産だからです。
自動車税や住民税などの税金を滞納した場合は、ローン会社名義であっても例外的に差し押さえられ、公売にかけられる可能性があります。
所有権留保付車両が駐車場に無断駐車しているケースは?
所有権留保されている車が駐車場に無断駐車して(地代を払わずに契約解除されて)、駐車場の運営者とトラブルになることがあります。
このケースでは、所有権に基づく妨害排除請求権をローン会社やディーラーに行使できる場合があります。
所有権留保車両の放置における留保所有権者の責任に関する判例
所有権留保付で売買された自動車の留保所有者の責任が問題となった最高裁平成21年3月10日判決があります。
自動車ローンで購入された車両が第三者の駐車場に放置された際、「所有権を留保している信販会社(Y)」が、土地所有者(X)に対して車両の撤去や損害賠償の義務を負うかが争われた事案です。
1. 事案の背景
関係性: AがXから駐車場を借り、Y(信販会社)の立替払いで車両を購入。車両の所有権は、代金完済まで担保としてYに留保されていた。
トラブル: Aが駐車場の賃料を滞納し契約が解除された後も、車両が土地に放置された。
請求内容: 土地所有者Xが、登録上の所有者であるYに対し、土地所有権に基づき「車両の撤去・土地明渡し」および「賃料相当損害金の支払い」を求めた。
2. 判決のポイント(最高裁)
最高裁は、ローン残債の「弁済期(期限の利益喪失)」の前後によって、留保所有権者(Y)の責任を区別しました。
| 区分 | 留保所有権者(Y)の権能 | 撤去義務・不法行為責任 |
|---|---|---|
| 弁済期到来前 | 車両の交換価値を把握するにとどまる | 原則として負わない |
| 弁済期経過後 | 車両を占有・処分できる権能を有する | 原則として免れない ※不法行為責任は妨害の事実を知った時から発生 |
ローン滞納から車が引き上げられるまでの流れ
ローンの支払いが滞ると、所有者であるローン会社は、所有権に基づいて車を回収します。
- 催促と督促: 滞納から約1カ月は電話やハガキで催促され、2カ月を過ぎると内容証明郵便で督促状が届きます。
- 期限の利益の喪失: さらに放置すると、分割払いの権利(期限の利益)を失い、残金の一括請求がなされます。
- 車の引き上げ: 一括請求と同時に引き上げ日が通告され、業者が自宅へ回収に来るか、指定場所へ持参することになります。引渡命令などの法的措置が取られます。
- 売却と残債の精算: 引き上げられた車はオークションなどで売却され、代金がローン返済に充てられます。売却代金がローン残高を下回る場合、不足分を改めて一括請求されます。
- 財産の差し押さえ: 残債を支払えない場合、ローン会社は裁判所を通じて、給与や預貯金などの差し押さえを行う可能性があります。
ローン契約書には、滞納時にローンの期限の利益を喪失し、直ちに車を返還する旨の条項(占有移転の合意)が含まれていることが一般的です。
所有権留保が付いている車は、ローン会社が法的な所有者であるため、裁判所の判決なしで引き上げられます。
自動車引渡命令
自動車引渡執行の申立てについて. 自動車競売開始決定を受けた債権者は,執行官に対し,直ちに自動車引渡執行の申立てをしなければなりません
https://www.courts.go.jp/tokyo/saiban/minzi_section21/mousitate_zidousya/index.html
「金融車」の定義
「金融車」とは、ローンの返済が終わっていない車が、所有者(ローン会社やディーラー)の意思に関わらず売買されている車のことを指します。
より広い意味では、「諸事情で名義変更できない状態の自動車」の総称として使われています。
以下のようなリスクがあります。
- 法的権利がない: 譲渡証明書などを受け取っても、法的な所有権はローン会社のままであり、名義変更はできません。
- 車両の返還義務: 本物の所有者(ローン会社)から返還を求められた場合、拒否することはできません。
- 維持・更新が困難: 自動車税の未納により車検が通せないケースが多く、所有者が強制的に抹消登録(廃車)をすれば、そのまま走行すると道路交通法違反になります。
- 保険や手続きの制限: 任意保険の加入を断られる可能性があります。ナンバープレートや車検証の再発行、不要になった際の廃車・解体も自分では行えません。
ローンを支払えない場合に使用者が車を残すための対処法
ローンを支払えない場合でも、数日の遅れであれば、連絡してすぐに支払えば引き上げを回避できるのが一般的です。
一時的な困難であれば、支払い期日の延長などをローン会社に相談できる場合もあります。
車のローン以外の借金だけを整理する「任意整理」を行うことで、車の支払いを継続しつつ生活を立て直せる可能性があります。自己破産を選択すると、原則として車は引き上げ対象となります。

