非公開会社における譲渡制限株式の譲渡と承認手続について

非公開会社で譲渡制限株式を譲渡する場合の記事です。

株式譲渡承認請求があった場合の対応や、株式譲渡に必要な書類をまとめました。

非公開会社・株式譲渡制限会社とは、定款で全ての株式に譲渡制限を設けている株式会社のことです。この記事では「非公開会社」で統一しています。

非公開会社の株式譲渡の流れ

株式譲渡が承認される場合の標準的な流れ

1. 株式譲渡承認の請求

まず、株主(譲渡人)が会社に対して、株式を第三者に譲渡することの許可を求める「株式譲渡承認請求」を行います。この際、譲受人の氏名や譲渡する株式の種類・数などを明らかにする必要があります。

・「株式譲渡承認請求書」には、譲渡する株式の種類・数、および譲受人の氏名(または名称)が記載されている必要があります。
・ 株式譲渡承認請求はは、原則として、株主と株式取得者が共同で請求する必要があります。

2. 取締役会または株主総会で譲渡承認の決議

会社は、定款で定められた承認機関(取締役会または株主総会)において、その譲渡を認めるかどうかを審議します。

・取締役会設置会社では、原則として取締役会で決議します。譲渡当事者となる取締役は「特別利害関係人」に該当するため、議決権を行使できません。
・取締役会非設置会社: 株主総会の普通決議によって決定します。この場合、当事者である株主も議決権を行使できます。

注意点として、会社が請求の日から2週間以内に承認・不承認の通知をしない場合、譲渡を承認したものとみなされます。(会社法145)

3. 承認の通知

会社から株主に対して、譲渡を承認する旨の通知を送付します。(会社法139Ⅱ)

4. 株式譲渡契約の締結と代金の支払い

譲渡人と譲受人の間で「株式譲渡契約(SPA)」を締結し、売買代金の支払いを行います。

(SPA:Stock Purchase Agreement)は、M&Aにおいて売主と買主が株式の譲渡条件(価格、数量、表明保証、損害賠償など)を定めて締結する最終的な法的契約書です。

5. 株券の交付(※株券発行会社のみ)

株券発行会社の場合、実際に株券を相手方に引き渡さなければ譲渡の効力が生じません。

株券発行会社で株券が発行されていない場合は、会社に株券の発行を請求して、株券が交付される必要があります。

一方、株券不発行会社では契約のみで効力が生じます。

※もし株券を発行したことがない株券発行会社の場合、当事務所では株券のデザイン(よくあるデザインでよければ)から印刷までお受けしています。
※譲渡をきっかけに株券を廃止する手続きをする株式会社も多いです。

6. 株主名簿の書換請求

譲受人が会社に対して、自分が新しい株主であることを名簿に記載するよう請求します。

株主名簿に名前が載らなければ、会社に対して株主としての権利(議決権や配当など)を主張できません。

7. 株主名簿記載事項証明書の交付

名義書き換えが完了した後、会社は新しい株主に対し、株主名簿に記載されたことを証明する書面を交付します。(会社法149条)

株式譲渡が「不承認」となった場合の流れ

会社が譲渡を承認しないと決定した場合、会社自身または会社が指定した指定買取人が、その株式を買い取らなければなりません。

1. 不承認の通知

会社は、譲渡承認請求を受けた日から2週間以内に、株主に対して「譲渡を承認しない旨」を通知します。この期限を過ぎると、譲渡を承認したものとみなされるため注意が必要です。

2. 買取人の決定と通知

会社が譲渡を認めない場合、代わりの買い手を決めて通知する必要があります。

・会社自身が買い取る場合
不承認の通知から40日以内に、株主に対して「会社が買い取る旨」と「買い取る株式数」を通知します。

・指定買取人が買い取る場合
不承認の通知から10日以内に、「指定買取人として指定を受けた旨」と「買い取る株式数」を通知します。

3. 売買代金の供託と証明書の交付

買い手(会社または指定買取人)は、株主に対して売買代金を支払う資力があることを示すため、法務局へ売買代金を供託し、その供託証明書を株主に交付しなければなりません。

この証明書の交付も、上記の通知期限(会社なら40日、指定買取人なら通知から10日)内に行う必要があります。

4. 株券の供託(株券発行会社の場合のみ)

株券発行会社において、株主が買い取りを求める場合は、買い手からの通知を受けた日から1週間以内に、株券を供託所に供託しなければなりません。

株主は供託後、遅滞なく会社等へその旨を通知します。

5. 売買価格の協議と決定

株式の売買価格について、譲渡人と買い手(会社または指定買取人)の間で協議を行います。

協議が調った場合:合意した価格で売買が成立します。
協議が調わない場合:当事者は裁判所に対して「売買価格決定の申立て」を行い、最終的には裁判所が価格を決定することになります。

6. 株主名簿の書き換え

代金の支払いが完了した後、会社は株主名簿の書き換えを行い、手続きが完了します。

会社が株式譲渡を承認したものとみなされる5つのパターン

譲渡制限株式の譲渡において、会社が譲渡を承認したとみなされるケースは、主に以下の5つのパターンがあります。

1. 回答期限内に通知を行わなかった場合
株主または株式取得者が会社に譲渡承認請求を行った日から、2週間以内(定款でより短い期間を定めている場合はその期間)に、会社が承認・不承認の通知を出しなかったときです。

2. 買取人の通知が期限内に行われなかった場合
会社が譲渡を「不承認」と通知した場合でも、その通知から40日以内(短縮可)に「会社が買い取る旨」を通知せず、かつ、不承認通知から10日以内(短縮可)に「指定買取人が買い取る旨」を通知しなかったとき、承認したものとみなされます。

3. 会社が売買代金を期限内に供託しなかった場合
会社が「自ら買い取る」旨を通知したものの、不承認通知から40日以内に売買代金の供託証明書を請求者に交付しなかったときです,。この際、指定買取人による通知も期限(10日以内)内に行われていないことが条件となります。

4. 指定買取人が売買代金を期限内に供託しなかった場合
会社に指定された「指定買取人」が買い取りの通知をしたものの、その通知から10日以内に売買代金の供託証明書を請求者に交付しなかったときです。

5. 株主側が売買契約を解除した場合
会社または指定買取人が供託まで行ったものの、金額の不足などの理由で、譲渡等承認請求者が売買契約を解除したときも、最終的に譲渡を承認したものとみなされます。

株式譲渡に必要な書類

株式譲渡契約書
株式譲渡承認請求書
株式譲渡承認(通知)書
株式売買代金領収書
名義書換請求書
株主名簿
株主名簿記載事項証明書

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