被相続人の損害賠償債務も相続放棄の対象となるか

過去に飲酒運転で交通事故を起こした父親が亡くなりました。

被害者の方から損害賠償を請求されています。相続放棄すれば支払いを免れることができますか?

はい。損害賠償債務も相続放棄の対象です。

家庭裁判所へ相続放棄の手続きをすることで、支払いを免れることが可能です。

被相続人(亡くなった方)が法律や契約に違反して他人に損害を与えていた場合、損害分の金銭を支払う義務(損害賠償債務)は、相続人に引き継がれます。

損害賠償債務も相続放棄の対象です。

相続人がこの債務を引き継ぎたくない場合は、家庭裁判所へ相続放棄の手続きをすることで、支払いを免れることが可能です。

損害賠償債務(損害賠償責任)とは?

損害賠償債務とは、法律や契約に違反して他人の身体や財産に損害を与えた際、その損害分を金銭で被害者に支払う義務です.

相続では「マイナスの財産」として扱われ、亡くなった人の義務は原則として相続人が引き継ぎます。

損害賠償債務の主な発生原因

損害賠償債務は、大きく分けて以下の2つのケースで発生します。

・不法行為に基づく損害賠償 (民法709条)
故意または過失により、違法に他人の権利や利益を侵害した場合に発生します。
(例:交通事故、他人を負傷させてしまったときの医療費、名誉毀損)

・債務不履行に基づく損害賠償 (民法415条)
契約に基づく義務を果たさなかったことで相手に損害を与えた場合に発生します。
(例:商品の納品が遅れている、売買契約したけど物を引き渡さない)

損害賠償債務を相続放棄する方法

相続放棄の手続きは家庭裁判所で行われます。

裁判所が申述書や戸籍などの提出書類を確認して、相続放棄の申述を受理すれば、相続放棄の手続きが完了します。

相続放棄しても支払義務が及ぶケース

相続人自身が義務を負っている場合

相続人自身が「自身の責任」として義務を負っている場合には、相続放棄をしても支払いを免れることはできません。

例えば、
・被相続人の連帯保証人になっていた場合
・未成年や高齢者の監督者の場合

このような場合は、相続人自身の責任として損害賠償の責任を負う可能性があります。

「相続放棄」と「相続分の放棄」を混同している場合

法律上の「相続放棄」と、似た言葉である「相続分の放棄(共同相続人間で自分の相続分を放棄すること)」は効果が異なります。

共同相続人間で自分の相続分を放棄することを「相続分の放棄」と言ったりします。これは相続人としての地位を失うものではありません。
そのため、プラスの財産を受け取らないとしても、マイナスの財産(負債や損害賠償債務)の負担義務は残ります。

自分の相続分を他人に譲渡した場合は、債権者との関係では債務を免れることはできません。

【注意】「相続を放棄します」と口で言うだけでは成立しない

相続放棄で損害賠償債務を免れられるのは、相続放棄が「法的に正しく成立した」場合です。

相続放棄は、「相続を放棄します」と口で言うだけでは成立しません。家庭裁判所で適切な手続きをおこなわなければなりません。

相続人が適切な手続きをしていなかった場合は相続放棄は無効となり、損害賠償を請求する権利が残ってしまいます。

法定単純承認とみなされる行為をした場合

相続放棄をする前、あるいはした後に、相続人が相続財産を処分したり隠匿したりすると、相続を承認したとみなされる「法定単純承認」に該当し、相続放棄が認められなくなったり、無効になったりします

財産の管理義務が残るケース

相続放棄をした時に相続財産(家や土地など)を現に占有していた場合、次の相続人が管理を始めるまで、その財産を保存・管理し続ける義務が残ります。

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