未成年者が相続放棄を行う際の法的な手続きと、その注意点について解説

未成年者が相続人となった場合の「相続放棄」の手続きは、成人の場合とは異なる注意点があります。

この記事では、未成年者の相続放棄における基本的なルールや、親が代理できるケース・できないケースについて解説します。

1. 未成年者は一人で手続きできない

法律上、未成年者(18歳未満)は単独で有効な法律行為を行う能力がないとされています。そのため、相続放棄の手続きは原則として法定代理人である親権者(多くの場合は親)が代わりに行う必要があります。

もし両親が共にお亡くなりになっているなど、法定代理人がいない場合には、裁判所に「未成年後見人」の選任を申し立て、その選任後に手続きを進めることになります。

2. 相続放棄の期限(3ヶ月)はいつから始まる?

未成年者の相続放棄の期限は、「法定代理人(親)が、その未成年者のために相続の開始があったことを知った時」から始まります。(民法915条、917条)

民法第915条(相続の承認又は放棄をすべき期間)
相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。ただし、この期間は、利害関係人又は検察官の請求によって、家庭裁判所において伸長することができる。

民法第917条(相続の承認又は放棄をすべき期間)
相続人が未成年者又は成年被後見人であるときは、第915条第1項の期間は、その法定代理人が未成年者又は成年被後見人のために相続の開始があったことを知った時から起算する。

親自身の相続を知った時ではなく、あくまで「子のための相続」を認識した時点が基準となる点に注意が必要です。

一般的な相続放棄は「相続の開始を知った時から3ヶ月以内」という期限が原則です。

3. 親が代理できる場合と「特別代理人」が必要な場合

未成年者の相続放棄には、「親と子の利益がぶつかるかどうか(利益相反)」があります。

「親権者も一緒に放棄するのか」それとも「子供だけが放棄するのか」が判断の分かれ目となります。

親がそのまま代理できるケース

親子で一緒に相続放棄をする場合: 親と子がどちらも相続する権利を放棄するため、利益の衝突がありません。この場合は親が子の代理人として手続きできます。

親権者ではない親(離婚した父など)が亡くなった場合: 離婚した母親は相続人にならないため、子供の代理として手続きをしても利益相反にはなりません。

「特別代理人」の選任が必要なケース

子だけが相続放棄し、親は相続(単純承認)する場合: 子供が放棄することで親の相続分が増える可能性があるため、親は代理人になれません。

複数の子供のうち、一部の子だけを相続放棄させる場合: 子供同士で利益が対立する可能性があるため、同様に代理は認められません。

このような場合は、子の利益を守るために、親に代わって手続きを行う「特別代理人」を家庭裁判所に選任してもらう必要があります。

4. 特別代理人の選任手続きについて

特別代理人の選任は、子供の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てます。

  • 誰がなれるのか: 利害関係がなければ、親族でも第三者でもなることができます。
  • 必要な費用: 収入印紙800円と、連絡用の郵便切手代(予納郵券)が必要です。
  • 主な必要書類:
    子供と親権者の戸籍謄本
    特別代理人候補者の住民票または戸籍附票
    利益相反に関する資料(なぜ放棄が必要か、裁判所に説明するための書類)

おわりに

手続きには裁判所への申立てが絡むこともあり、判断を誤ると期限を過ぎてしまうリスクもあります。3カ月を過ぎても相続放棄が認められる可能性はあるので、専門家にご相談ください。