中小企業では、株主に相続が発生したり、転居して携帯電話の番号が変わってしまったり、疎遠になって連絡が取れないケースが存在します。
このように連絡が取れなくなった株主を「所在不明株主」といいます。
株主と連絡が取れなければ株主総会決議ができなくなり、会社運営がうまくいかなくなることがあります。
この所在不明株主が発生してしまった場合の対応方法について説明します。
まずは所在不明株主を探す
まずは「所在不明株主を探して協力を求める」ことになります。
「住民票の所在地」が判明していれば現在の住民票上の住所地が判明することがあります。
この方法は、所在不明株主が、会社の行おうとしている「取締役の就任」「事業再編」「会社継続」に協力してくれることが前提です。
所在不明株主が見つからなかった場合や、協力が得られそうにない場合には所在不明株主を強制的に排除する方法を利用します。
所在不明株主を強制的に排除する方法
所在不明株主が所有する株式を、強制的に取得する方法は次の3つがあります。
① 所在不明株主の株式売却制度(会社法197条)
② 特別支配株主からの株式売渡請求制度によるスクイーズアウト(会社法179条1項)
③ 株式併合によるスクイーズアウト(会社法180条)
① 所在不明株主の株式売却制度(会社法197条)
所在不明株主の株式売却制度は、一定の要件を満たすときに所在不明株主の有する株式を競売することができる制度です。
第197条
株式会社は、次のいずれにも該当する株式を競売し、かつ、その代金をその株式の株主に交付することができる。一 その株式の株主に対して前条第1項又は第294条第2項の規定により通知及び催告をすることを要しないもの
二 その株式の株主が継続して5年間剰余金の配当を受領しなかったもの
一定の要件を満たせば、競売ではなく、裁判所の許可を得て任意に売却することができます。
「所在不明株主の株式売却制度(会社法197条)」は最終手段です。この方法は会社から株主に対してする通知又は催告が、5年以上継続して到達しなかったときという厳しい条件が必要です。
対応方法が法定の手続きを履行していなければ無効になる可能性もあるため、専門家に相談することをお勧めします。
② 特別支配株主による株式売渡請求制度(会社法179条1項)
総株主の議決権の90%以上を保有する「特別支配株主」が、他の株主全員に対して、その所有する株式全部を自己に売り渡すよう請求できる制度です。
① 株式会社の特別支配株主(株式会社の総株主の議決権の十分の九(これを上回る割合を当該株式会社の定款で定めた場合にあっては、その割合)以上を当該株式会社以外の者及び当該者が発行済株式の全部を有する株式会社その他これに準ずるものとして法務省令で定める法人(以下この条及び次条第1項において「特別支配株主完全子法人」という。)が有している場合における当該者をいう。以下同じ。)は、当該株式会社の株主(当該株式会社及び当該特別支配株主を除く。)の全員に対し、その有する当該株式会社の株式の全部を当該特別支配株主に売り渡すことを請求することができる。ただし、特別支配株主完全子法人に対しては、その請求をしないことができる。
③ 株式併合を用いた株式の強制取得(会社法180条~182条、234条、235条)
「株式併合」とは、複数の株式を合わせて、1株に統合する制度です(会社法180条)。
第180条【株式の併合】
① 株式会社は、株式の併合をすることができる。
この制度は株主総会の特別決議が必要です。通常、3分の2以上の株主の賛成があればできます。
株式併合により1株以下となる株式が生じた場合には、競売したり、裁判所の許可を得て売却することができます(会社法234条、235条)
所在不明株主に対応する場合は、対価を交付することができないため、供託手続を使います(民法494条)。
