仮登記とは?仮登記があると売却できない理由や抹消方法について

不動産登記簿を見ていると稀に「仮登記」といった記載を見かけることがあります。

親から相続した土地を売却しようとして初めて古い仮登記(10年以上前のものなど)が判明するケースは珍しくありません。

仮登記の意味や抹消方法について解説します。

仮登記とは?

仮登記とは、将来行われる本登記のために、あらかじめ登記上の順位を確保(保全)しておくための予備的な登記です。

不動産登記は「早い者勝ち」というルールがあり、先に登記を備えた者が第三者に対して優先権を持ちますが、書類の不足や条件が未成就で本登記ができない場合に、この仮登記によって「順位」を予約しておくことができます。

仮登記の2つの種類

仮登記には、その理由によって以下の2つの種類(1号仮登記と2号仮登記)があります。

1号仮登記(実体上の権利変動は生じている場合)

売買などで既に所有権は移転しているものの、登記識別情報(権利証)の紛失など、手続きに必要な書類が揃わない場合に行われます。

1号仮登記は「所有権移転」と記載されます。これは、実体上の権利変動(所有権の移転)は既に起きていることを示しているためです。

原因には単に「売買」などと記載されます。

2号仮登記(実体上の権利変動がまだ生じていない場合)

現時点では権利は移転していないが、将来的に移転させる「請求権」を保全したい場合に行われます。

2号仮登記は「所有権移転請求権」や「条件付所有権移転」と記載されます。

原因には「売買予約」や「売買(条件 農地法第5条許可)」のように、将来の権利変動を示唆する文言が記載されます。

具体例としては以下が挙げられます。

  • 売買予約: 将来、買主が「予約完結権」を行使した際に売買を成立させる約束をしている状態です。
  • 条件付売買(農地法など): 農地の売買のように、農業委員会の許可が得られるまで所有権移転の効力が発生しないケースです。

仮登記の効力は「順位保全効」

仮登記自体には、自分が権利者であることを第三者に主張する力(対抗力)はありません。

しかし、後に条件が整い本登記が行われると、その順位は仮登記をした時点までさかのぼります。

この「順位保全効」が非常に強力です。

仮登記が本登記されると、その仮登記よりも後になされた他の登記(例:後から買った人の所有権移転登記など)は、登記官によって職権で抹消されてしまいます。

売却・取得時の注意点

1. 売却時の注意点:仮登記の抹消が原則

仮登記が付いたままの物件を売却しようとする場合、「仮登記を抹消してから売却すること」が実務上の大原則となります。

仮登記がある状態では、将来的に買い手が所有権を失う可能性があるため、不動産業者からも「抹消後でなければ買い手を見つけることは困難」と指摘されるでしょう。

2. 取得時の注意点:所有権を失うリスク

取得側にとって、仮登記がある不動産を購入することは、将来的に所有権を失うリスクを伴います。

本登記による職権抹消: 仮登記名義人が将来「本登記」を備えた場合、その順位は仮登記の時点にさかのぼります。その結果、仮登記より後になされたあなたの所有権移転登記は、登記官によって職権で抹消(削除)されてしまいます。

3. 特殊なケース

仮登記名義人から直接購入する場合

実体上の所有者が仮登記名義人である場合、その人から購入することは法律上可能です。

金融機関が「条件付き賃借権設定仮登記」が残っている場合

賃借権の仮登記: 過去には金融機関が「占有屋」対策として「条件付き賃借権設定仮登記」を利用していた例があります。これらはローン完済後に抹消されるべきものですが、残っている場合は決済までに抹消することを条件にするなどの交渉が必要です。

仮登記を本登記にするには第三者取得者承諾が必要

仮登記を本登記にする際、現在の登記名義人(第三者取得者)は、登記手続き上「利害関係人」となり、原則としてその承諾が必要になります。

承諾が得られない場合は訴訟で登記をする流れになる可能性があります。最終的には確定判決によって強制的に本登記をします。

長期間経過した仮登記を抹消する方法

親から相続した土地を売却しようとして初めて古い仮登記が判明するケースは珍しくありません。

10年以上経過した古い仮登記については、その原因となっている権利が消滅時効にかかっている可能性があるため、抹消できることもあります。

売買予約(所有権移転請求権仮登記)の場合

買主が売買契約を成立させる権利(予約完結権)は一種の債権であり、権利行使が可能になった時から原則10年で時効により消滅します。

農地法の許可待ち(条件付所有権移転仮登記)の場合

売主に対して許可申請への協力を求める権利(許可申請協力請求権)も、同様に権利行使が可能になった時から10年で消滅時効にかかると解されています

任意による抹消(協力が得られる場合)

仮登記名義人の協力が得られる場合は、不動産の所有者が仮登記名義人に対し、時効を援用し、相手方と共同で抹消登記を申請します。

名義人が既に亡くなっている場合は、その相続人を特定する必要があります。

所有権の仮登記を本登記にする際は、第三者の承諾書(印鑑証明書付き)が必要です。

裁判手続きによる抹消(協力が得られない場合)

仮登記名義人が任意の抹消に応じない、あるいは相手方が不明な場合、所有権に基づいて「仮登記抹消登記請求訴訟」を提起します。

時効の成立などが認められ、勝訴判決が確定すれば(確定判決があれば)、相手方の協力がなくても所有者が単独で仮登記を抹消することができます。

この「確定判決」が第三者の承諾書に代わります。

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